“サクラノ刻 -櫻の森の下を歩む-” 感想

“サクラノ刻 -櫻の森の下を歩む-” はケロQ(枕)制作のエロゲ。
11年延期したゲームこと“サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-” の8年後に出た続編にあたる。同ブランド・ライターの“素晴らしき日々~不連続存在~”がかなり面白かったので前作からプレイしていた。
“素晴らしき日々”では “幸福に生きよ!” というテーマが込められていたが、“サクラノ” シリーズでは “幸福の先の物語”について語られる、らしい。

以下、ネタバレには配慮していない。
前作の内容をあまり覚えていなかったのでプレイ前に前作を再読した上でプレイしている。久々にがっつりエロゲやったな・・・

プレイ時間:12時間
“詩”より短い。“詩”は20時間くらい使った気がする。ただ中盤まであまりにもしんどくて、それで読むのが進まなかったというところはある。

評価:非常に良い
Ⅴ章のファンタジー部分が強めだったところは人によって好みが分かれそうだが、面白いかどうかでいえば間違いなく面白かった。“詩”はあまりにも冗長で退屈に感じられるシーンが非常に多かったのだが、今作は全体通して楽しめた。

◇各章の感想
◆La gazza ladra
初っ端から前作でほぼ登場しなかった静流、本間麗華をメインに置いた過去話。
前作の時点で設定の構想があったかは不明だが、麗華のキャラクターに関しては後付だとしても上手い具合に纏めたな~と感じた。Ⅰ章の癖に面白いぞ?

◆Картинки с выставки
学園パート。導入。可もなく不可もなく。普通の学園ギャルゲですね。前作最終章からの接続。ルリヲさんが可愛い。
しかしなんでいつもオナニーについて語ってるんだろうか。

◆Night on Bald Mountain
こじらせメンヘラホモおじさんによるハイテンションな語りが長くて楽しい回。

◆Der Dichter spricht
完璧超人心鈴ちゃんルート。
心鈴ちゃんは非常~に可愛いね。それ以外語る内容がないかな・・・
神絵師になって本間心佐夫くんを立ち直らせる後半の話は本当にどうでも良すぎた。低俗な創作にも価値はある、って話だったんだが話そのものが放り投げすぎてて。奈津子ちゃんが少し話に絡むと思ったらそんなことはなかったぜ!
エロシーンはかなり趣味が出てて良いと思いました。

◆kibou
青春をおいてきた(別ライター)真琴ルートのやり直し。内容も前作picapicaの新解釈・ハッピーエンド版といった感じ。やはりここでも話の中心にはなれず、設定補完みたいな話になってしまうのが真琴というキャラクターなのか。
いきなりエロに移行するの、歳取って性欲高まりすぎだろ。エロがきて最後に話のラストに告白という珍しいパターン。

話の本筋自体は面白くはなかったが、失うことが怖くて手に届かないところで満足してしまう、という真琴に対する直哉のやり取りは好き。
最後にpicapicaが流れたの良かった。オタクは過去の引用に弱い。ラストの “ちきしょう!”が好き。
幾望-既望-希望というワードセンス、100000000点。

◆mon panache!
圭視点の過去話。
ギャグパート以外の描写が薄かったため、圭との関係性・想いに対して入り込めないというか、実感が湧きにくいというのが前作の問題点の1つであったと思う。
全体的に後付感は凄いのだが、夏目圭の人生・直哉との関係性を描いており、前作の補完としては満足した。

◆D’où venons-nous? Que sommes-nous? Où allons-nous?
直哉が再び芸術家として筆を取る。最大トーナメント編開幕。
奉仕者として他人のために筆を振るってきた直哉が、直哉のために動く皆によって再び筆を取ることになる、という流れは良い。
トーナメントの絵画バトルは最初に負けた2人が完全に割を食った形になったな。特に里奈は出てきたと思ったら見せ場もなく負けてしまったのでかなり可哀想だ。そして何故か優美とのレズシーンが入る。この辺はライターの趣味っぽいけど。
長山香奈の凡人逆襲シーンでshadeの曲流れ始めたのは笑った。
凡人の長山に神が降りたという展開は、これまで凡人プッシュしてきたから微妙な気もするが、やはり彼女も直哉の再起を願うファンボの1人だったということを考えると納得はいく。

トーマスによるカーチェイスは燃えるところなのかもしれないが、トーマスのキャラクターがあまり好きにはなれなかった上に出番がいつも唐突なので微妙だった。明石は全然不快感ないんだけどなあ。

ラストで突然フルボイス化したし、草薙直哉攻略ルートということなのだろうか。

全体的に、思ってたよりも伯奇のファンタジー要素が多く、トーマスや明石を活躍させようとしたあたりで終盤はちょっとゴリ押したなという印象は拭えないw

◆エピローグ
特に言う事もないか。Kのその先へ、ということなのか。

◆凍てつく7月の空
圭死亡後の稟と雫、吹の誓い、ムーア展に出すまでの話。割りと重要だけどこれ限定特典でいいのか?
素晴日々メンツも登場。

◆稟と雫と口と口
特典小説の更に続きという感じ。

◇演出やグラ、音楽が良い
前作ではかなり稟の立ち絵が不安だった。8年経過しており、相応に進化している。
音楽は変わらず良い。

◇UIがかなり改善された
前作が8年前基準でもかなり化石みたいなシステム周りでしんどかったが、今作は相応のレベルに達していると感じた。
Windowモードを引っ張れる!選択肢まで飛べる!バックログで飛べる!

◇僕が好きだったシーン集
“詩”の読み直しからやったので、前作のものも含む。

ZYPRESSENまではつまらなくて読むのがかなり苦痛だったんだけど、そこからは一気に面白くなる。ZYPRESSENは全体的に厨房度が高いし、なかなかマッチョというか、強度の高めな百合物で個別の話では一番好きだ。
欲望優先ルートの本を投げ捨てるシーンも印象的だった。

ここ嫌いなやついねえだろ。

真琴の話は共に本筋自体は全然面白くなかったのだが、交流という意味では好み。

心鈴ちゃんは可愛い、このルートはただそれだけで良いんだ。

イワン・クパーラの前夜熱演おじさん好きです。やっぱりそういうことなんだよね。

私は長山香奈が好きです。事実上、裏ヒロインだろこいつ!

◇good
・グラや演出が良い
・シナリオゲーとして面白い
・システムUIは前作より改善
・(長山香奈の扱いが良い)

◇bad
・(学園ルートはなし)

◇総評
“詩”の続編として出された本作。圭周辺、前作の補完を含めたFD的な作り方という印象を受けた。
伯奇や千年桜のファンタジー要素について、前作では出した意義をあまり感じられなかったところがあった。今作ではそこを活用するため(出したからには使う必要がある)か、弓張釉薬とプッシュしてきたのでⅤ章は期待していたのとは若干違ったかな~と感じたのは事実。

あと弓張学生組が空気で、前作ヒロインの里奈・稟・雫も出番が本当に最後だけなのでそういう方向性(個別ルート豊富な学園エロゲ)を期待していた人にとっては肩透かしの展開になったかもしれない。

とはいえシナリオゲーとして面白いことは間違いない。ただし“詩”の方が中盤まであまりにも読むのが苦痛だったので、なかなか人に勧めにくい・・・ 

やたらと引用が多かったりする作品ではあるのだが、全体的に何度も言葉を変えて說明してくれているしストーリーライン自体はシンプルで割りと親切な作り。それでいてちょっと考えたくなるような文章になっているのが凄い。
内容というか、テキスト部分は “詩” の中盤以降の方が好みだったかなあ。今作は音節やら光の明滅やらテンポやらロックやら月の満ち欠けやらで何度も同じ内容を說明してくれているが、それを語りすぎ、身体を濁らすと捉える人はいるかもしれない。前作の補完を兼ねた作品というところは間違いないので、多少說明しすぎるくらいでいいのかな、と自分は感じる。
演出やグラ周りはリアル8年経過していることもあり、圧倒的に進化している。
そしてまだ続編?の “サクラノ響” が出るかもとのことで。次は何年後ですかね。この会社って納期とかいう概念ないんだろうなあ。出たらまた読み直しかなあ…

僕は“すばひび”の救世主に覚醒してる卓司君の演説シーンとか、ざくろちゃんの話とかが大好きなんですが、ああいう黒い感じなのはもう見れないのかな。“空へ!”とか最高だったよね。

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